デカールの奥義伝授
前振り
振返って松本の幹事長氏のコメントを見てみますと、確かにデカールの失敗が、多い気がします。はじめは「そう言う事も、希には、あるかな?」くらいに思っていましたし、難局に対しては大和民族の突貫精神で(←コレが大事!)、とも思っていましたが、流石に回数も多いですし、そもそも精神論でデカールは、どうこう出来るものでもありません。
という事で、ちょっと書くことにしました。
もともとは、P−51Dのページなどに分割して掲載していましたが、それを再編して、纏めて掲載しました。
How to デカール貼り
先ずは切り出し。
透明な余白を切り出すのは基本ですが、小さいデカールですと純粋に接着面が狭くなり、接着力も減りますので、その点には注意。
あまり目に余る余白でなければ、そう神経質にならなくても大丈夫ですし、そのままでも構わないと言えば、構いません。
次に水ですが、説明書にはぬるま湯と書かれていますが、自分は、電気ポットのお湯を使っています。
そのまま(97℃)ですと熱で縮れますが、容器に移した時点で若干温度が下がりますし、量も少ないので、冷めるのも早いです。
心配でしたら、一呼吸置いてから、の方が良いでしょう。
すべてを知り尽くしている訳ではありませんが、経験した範囲では、ファンモールド、特に飛行機に付属しているデカールは熱に弱いので、絶対にお湯は避けて、温度の低いぬるま湯に浸した方が良いです。
この時、デカールは浸すのではなく、ピンセットで摘まんで(熱くて指は入れられません)、デカールをしゃぶしゃぶします。
本当にしゃぶしゃぶをする感覚で、2〜3往復させれば、十分です。(大人の、と言うか、Hな、しゃぶしゃぶではありません)
また、ここで注意して欲しいのは、しゃぶしゃぶする分には耐えられても、ある程度の時間浸しているとデカールが縮れる、と言う事もあります。
後は、自分はマウスパッドを使いますが、適度に水分を切れる物の上に置いておきます。
軽く触って、デカールが動けばOKですが、もしダメなら、もう一度お湯の中で1往復くらいさせます。
先にも書きましたが、入れ放しは良くありません、その都度引き上げて様子を見ましょう。
また、複数のデカールを浸す時も、一枚毎にしゃぶしゃぶしたら引き上げて水を切る、足りなければ一枚毎に再度しゃぶしゃぶする。貼るのに手間取って水分が乾いてしまったら、貼る分だけ、しゃぶしゃぶすれば、問題ありません。
お湯を使う事で若干ながらも、デカールを柔らかくする効果もある、…と思います。
ここまでは、言わば貼るまでの下準備です。ここから、いよいよ本番、貼りに入ります。
さて、ここから貼りに入りますが、先ずは、貼る付近に「マークセッター」を十分に塗っておきます。
お湯を使うと素早くデカールを台紙から剥がせますが、その分添付されている糊も落ち易いので、その対策の意味もあります。
デカールを台紙からスライドさせてキットに貼りますが、残っている水分は適度に落としておきます。
貼る場所についてですが、だいたいこの辺りといった感じで、かなりアバウトです。(後で動かせますから、あまり神経質にならなくてOKです)
デカールは、別名スライドマークと言うくらいですから、台紙ごと貼る付近に持っていき、文字通りスライドさせてキットに移します。どうやら松本の幹事長氏の失敗の大半は、ここに原因があった事が、後の追跡聴き取り調査で判明しました。
ここがポイントですが、デカールや台紙に残っている水分と、キットに塗られているマークセッターとで、デカールが軽く浮く状態にします。
デカールを貼る位置決めは、大きく動かす時は指、微調整は爪楊枝で、デカールを動かします。(あくまで自分のやり方ですので、ここは、やり易い方法で)
マークセッターの成分で極端に柔らかくなっていなければ、爪楊枝で触っても、デカールは浮いている状態なので、破れることなく、簡単に動きます。
逆に言えば、爪楊枝で軽く触ってデカールが動かなければ、水分が少ない状態ですので、マークセッターか、水を補充します。
大事なことなので、二回、言います。デカールを弄る時は、必ず水分で浮いている状態で、弄る。
また、マークセッターの成分で柔らかくなり過ぎていると感じたら、直ぐに水を塗って薄める、そして弄らない。
但し、乾燥して固着してしまうと、後々厄介なので、糊が効かない程度の水分を補充しながら、デカールの軟化成分が効かなくなるのを待ちます。
経験上、前述のファインモールドの飛行機に付属しているデカール、ピットロードのキット付属のデカールは、柔らかくなり易いですが、それ以外は、ほぼ大丈夫だと思います。
逆にタミヤでは一部のウォーバード・コレクションに付属しているデカール、ハセガワのiM@S機のデカールには、マークセッター、マークソフターが効き難いです。
位置が決まりましたら、綿棒などで、先ずは周囲の水を吸い取ります。
この時、周囲の水に誘われるように、デカール縁付近の水分も、吸われていくと思います。
位置決めに手間取り、水を大量に使って、接着が不安なようでしたら、マークセッターをデカールの下に、筆を滑り込ますようにして、塗ります。
経年劣化でデカールが最初から割れていたり、途中で破損してしまった場合ですが、前者ならリキッドデカールフィルムが便利ですが、現在では事実上入手不可能となっています。
別になくても、破損したデカールをキット上でパズル感覚で合わせていき、最後にマークソフターを塗ってやれば、完成後は、ほぼ分りません。(製作者で、そこが破損している事を知っていて、拡大鏡などで捜せばと言うレベルで、普通なら、先ず分りません)
後は、痛車などの大判デカールでしたら筆で、普通のサイズでしたら綿棒などで、中心部から外側に向かって、水分を出していきます。俗に言う綿棒コロコロってヤツですね。
また、前に「F-15E ストライクイーグル “如月千早”」の時にも書きましたが、事前に見え難い、目立たない箇所に、切り込みを入れておくと、水分を出し易いですし、シルバリングが起きても簡単に対処出来ます。
あと、筆に関しては、模型用よりかも、絵画用の柔らかい筆の方が、向いています。
綿棒ですが、安い物でしたら100均で400本100円というのが知っている範囲では最安ですが、それでも十分です。
使い終わった綿棒ですが、時間が経って乾くと、マークセッターの糊成分で、固くなります。
糊成分は水溶性で油には溶けないので、ウォッシングの拭き取りやエアーブラシの清掃など、再利用可能です。固いのでスミ入れの拭き取りには、意外と重宝します。
最後に仕上げとして、そのままですとマークセッターの糊成分で完成品が白く汚れていますので、マークソフターを塗って、これを綿棒で拭き取ります。デカールを密着させつつ、表面をきれいにする訳です。
水汚れは、水で。油汚れは、油で。同じ系統で落とすのが、綺麗にする時の基本ですから、マークセッターの汚れは、同じ成分であるマークソフターで落とす、理に適った方法と言う訳です。
キット表面の凹凸でデカールがフィットしていない場合は、軽く絞った濡れ布巾を電子レンジで1分程度加熱、これを押し当てて密着させます。
(三菱 F−2A“アイドルマスター 双海亜美”の製作記事、参照)
凹凸とか関係無しに、短時間で密着、固定させる手段としても、有効です。
この方法が恐いと感じるならば、マークソフターを塗って、放置。と言うのも、手です。
あと、マークソフターなどを使用して、デカールが軟化し過ぎて表面に皺が出来てしまった時ですが、こう言った場合、案外と良い解決策なのは、何もしない事です。
一晩経って見てみたら、綺麗になっていた、と言う事も多々あります。
勿論、効果を確約できる訳ではありませんが、下手に弄って、返って収拾が着かなくなった、と言う事態になるよりかは、マシです。
と、まぁ、こんな感じです。
あくまで自分が、そうしていると言うだけで、成功を保証できる訳ではありません。
デカール貼りを一言で纏めるなら、「tranquilo!! 焦んなよ!」です。
別に流行に乗っかる訳ではなく、昔から、自分にそう言い聞かせて、やっています。
例えば、デカールを複数枚重ね貼りする場合、焦ってやると、一枚目のデカールが乾燥、固着しておらず、結果として二枚目が貼れないどころか、一枚目も貼り直す事になります。
或いは、デカールを貼る為にキットを持ったら、気付かないうちに別の所に貼ったデカールがずれていたり、剥がれて紛失していたりなど、慌ててやって良い事は、何一つありません。
ですから、デカールを貼る時は、余裕をもって、一枚ずつ確実に貼る。
結果として、その方が確実で、早く、綺麗に貼れます。
と言う訳で、デカールを貼る時は、Tranquilo! Cabron!!
貼り間違えのリカバリー方法は、又の機会と言う事で、それが何処に書かれているのか? それは、貴方自身の目で、確りと捜して下さい。
…でしたが、再編しましたので、直ぐ下に書いてあります。
How to 失敗したデカールのリカバリー
再び、前振り。
さて、以前より自分が提唱している「帝國陸軍式模型」ですが、何か困った事があっても、「不可能を可能にし、無理をやり抜くのが、皇軍だ!」「靴が小さければ、足を合わせろ!」、この台詞一発で済みます。
もし、それでダメな時でも「貴様等、命が惜しいのかっ!」、この一言で大概は収まります。
ですが、帝國陸軍を信奉する人にしか通じないのが、最大の欠点と言えます。
しかも相手が人ではなく、物となると、不屈の帝國陸軍魂も、まったく通しません…。
と言う訳で、続きになりますが、今回もデカールのお話です。
こちらは「三色戦闘機 飛燕」からの、再録です。
では、貼り間違えたデカールのリカバリー方法です。
最初に言っておきますと、上からクリアーなどでコートしていない限りは、必ずリカバリー出来ます。
要は、根気です。
用意する物は筆と水、…これだけです。
まぁ、水に中世洗剤を1滴程度入れても良いですが、ただの水でも、十分です。と言うか、その方が、いいです。
やり方ですが、剥がしたいデカールの上、周囲に水を塗ります。
そして延々と筆先で際を突っついたり、擦ったりします。
この時、唯一のポイントらしいポイントですが、焦って、無理をしない事、デカールを痛めないように、あくまで優しくやる事、です。
筆は、デカールを痛めない為にも、なるべく柔らかい物を使います。
とにかく気長に、繰り返し、やる事です。
そして、決して、焦らない。
正確にどのくらいとは言えませんが、経験上長くても10分〜15分程度で、必ず、何処かに取っ掛かりが出来ます。
具体的には、筆先でツンツンとデカールの際を突っついているうちに、何処か一箇所、わずかに浮く箇所が出来ます。
これが取っ掛かりです。(飛行機など凹モールドがある場合は、そこが狙い目です)
もう、これでデカール剥がしは、8割以上、成功したも当然です。
後は、取っ掛かりの所から、筆先をすべり込ませて、水をデカールとキットとの間に入れてながら、徐々に捲れる面積を拡大していきます。
大版デカールなどは、どうしても筆先が入りこめるのにも限界がありますから、こうした場合は複数個所に取っ掛かりを作り、多方向から剥がしていけば、剥がせます。
おそらく最初の取っ掛かりさえ作れれば、後は面白いくらい簡単に剥がせるとは思います。
ただ、この時、必ず水が常にある状態にして、浮いたデカールが再度接着されるのを防ぎつつ、保護にも努めます。
デカール貼りの時に書いたように、デカールが浮いた状態、これを常にキープするようにします。
ここまで読んで「え〜、デカールって、一度乾燥した貼りついた後は、水でも洗っても大丈夫なんだし、こんなんで剥がせるの?」
と疑問に思う人も、多々、いるかと思います。
断言します、絶対に剥がせます!
唯一、注意するとしたらデカールに最初から添付されている糊、マークセッター、木工用ボンドなど、水由来の糊成分で貼ってある事が、大前提になります。
過去に、「日野 レンジャー / けいおん! 痛トラック」の大版デカールも、この方法で剥がしました。
レンジで熱したタオルで密着させて「三菱 F−2A“アイドルマスター 双海亜美”」のデカールも、この方法で剥がしました。
少なくても、この「筆と水でツンツン方法」で、剥がせなかった、剥がすのに失敗した事は、ありません。
あと、余談にはなりますが、失敗した方法も書いておきます。
如何にも良さそうだと思ったのですが、実際にはダメだった方法です。
シール剥がしの定番方法として、中世洗剤の界面活性成分を利用する方法があります。
界面活性成分は、要するに物を引き剥がす力です。
剥がしたい物の上に中性洗剤を塗って、乾燥しないようにラップで覆って、放置する。
と、言うやり方です。
…この方法ですが、デカールも剥がれなくはないですが、それ以上に塗料が剥がれてしまいます。
何と言うか、火脹れみたく、塗装した面が、ブクブクになります。
まぁ、自分も、プラカラーの空瓶を、この方法で綺麗にして再利用していますから、想像は出来ましたが、デカール剥がしに使うのには、リスクの方が大き過ぎますし、あまり上手く行きませんでした。
ちなみに犠牲なったのは「チェイサー」です。
ですからデカール剥がしの時は、中性洗剤を使わずに、水だけでやりましょう。
その方が良いと書いたのは、こうした苦い経験があるからです。
また、ただの水と中性洗剤を加えた水とで、最初の取っ掛かりが出来るまでの時間に、明らかに違うと思えるほどの差はありませんでした。
勿論、デカールを貼るのに失敗しないのが一番ですが、貼り間違えなど失敗しても、やり直しは利きます。
諦めないこと、焦らないこと、必ず剥がせると信じること、それがポイントです。
How to 古くなったデカールの再生方法
最後の前振り。
さてと、バラバラに書いていますから、必ずしも順番に読んでいるとも限りませんが、三回に渡って書いてきましたデカールについて、それの最終回です。(1回目と2回目は、貴方自身が、その目で、確かめて下さい)
今回のテーマは、わりと簡単です。
古くなって黄ばんだデカールの再生方法、です。
大きく分けて2つ方法があり、ハイリスク・ハイリターンな方法と、ローリスク・ローリターンな方法です。
先ず、ローリスク・ローリターンな方法ですが、やり方は極めて簡単、日光に晒す、…終わり。
台紙がキャラメル色くらいになっていても、3ヶ月程度で、概ね白くなりますし、染みなども、ほぼ消えます。
概ねと言う表現を使っていますが、具体的にはプラカラーで言うのであれば「ホワイト」ほど純粋な白までは戻りませんが(元の程度が上記のような場合)、「グランプリホワイト」程度の白さまでは、戻ります。
この方法は、黄ばんだデカールを、ビニール袋などに入れて、陽のあたる窓に貼っておけば、後は時々状態を確認するだけなので、手間は掛かりません。
が、時間は、掛かります。
少し黄ばみが気になる程度のデカールなら1〜2週間、台紙に染みがあるくらい古くガッツリと黄色なデカールでしたら2〜3ヶ月と、とにかく時間が掛かります。
如何せん、時間しか解決策がないので、気長に待つしかなく、これが最大のネックにはなります。
ただ、日光に晒すだけなので、ほぼ失敗する要素もなく、この辺りがローリス・ローリターンたる由縁です。
一方、ハイリスク・ハイリターンな方法ですが、この方法は、自分も知っているだけで、あまりに恐いので、試した事がありません。
漂白剤に晒す、と言う方法です。
確かに黄ばみを抜くと言う点では、漂白剤本来の使い方ですし、間違いではないのですが…。
どうもタイミングを間違えると、デカールの印刷面まで落ちてしまうらしく、かなりのリスクを孕んでいます。
一方で、前述のようにタイミング勝負的なところもありますが、時間は短く、成功さえすれば、新品のように白く戻るそうです。
実際、自分は前者の方法しか使いませんし、折を見て保管してあるキットのデカールの状態を確認、黄ばんだ物を窓に貼っておきます。
以前、リサクルショップでデカールの黄ばみが酷く、「デカール不良」扱いで、100円で売られていた「F-4 ファントム」のデカールも、3ヶ月で復活出来ました。(使用前の写真を撮っておかなかったのが残念ですが、本当に染みだらけで、台紙はキャラメル色でした)
もっとも今回は、あくまで黄ばみの戻し方で、目では見え難いですが、経年劣化によるひび割れなど、古いデカールは、それなりにリスクを孕んでいます。
自分は、物にもよりますが、基本的にデカールは、すべてスキャナーで取り込んで、バックアップ用のデータは、作っておきます。
最近はスキャナーも安くなりましたし、プリンターと一緒になっている機種も多く、価格も安いですから、手元にあるという人も多いかと思います。
勿論、デカールを自作する技術は必要になりますが、これも一つの手だとは思います。
黄ばんだデカールは日光に晒す、と言うのは、古典的な方法ではありますが、最近の模型誌では、こうした古典的かつ基本的な技術や方法を、まったく紹介しませんよね。
定期的に初心者向けの特集は組んではいますが、こうした点には、まったく触れられてないような気がします。
今風か、どうかで言えば、今風じゃあないですが、ただ昔からある古いやり方がダメとか、そう言う訳でもないと思うんですよね。
まぁ、知っている自分が、それだけ年寄りって事でもあるんですけど…。