〜自分史上最高の電飾〜

 

水凪 海

 

 模型写真物語とのテーマが決定してから、候補に挙がっていたのが「加賀」です。もともと自分の中で、真珠湾の空母六隻を順次製作する、というテーマは決まっており、数年がかりで製作していくつもりでしたが、今年は加賀の順番となったわけです。これを中心にすでに仕上がっている赤城と組み合わせて写真を撮影し、物語としようと思っていたのですが・・・。

 ご存知の通り、本年のもう一つのコンペとしてG1クライマックス2014があり、そちらのほうの出品と重複も可、との計算も働いていました。ところが、G1のコメントにも書いた通り、自分の中で最も力を注いだ隼鷹でモチベーションを使い果たしてしまい、肝心の加賀がどうもしっくりこない。キットの出来が良いのは事実として、それなりに手を加えてはいるものの、自分の中でいつも使っている技術を援用しただけで、新しい試みがなかったことが原因かもしれません。とにかく、完成度にかかわらず、自分の中で今回の加賀は消化試合となってしまったのです。唯一艦載機だけは隼鷹、加賀と新たな試みをすることができました。この点については良かったとは思っています。さらに、その加賀がコンペにおいても評価をいただいたことで、余計に使いまわし難くなってしまったことも事実。

 この点を踏まえ、候補として挙がったのが、「バルグレイ」です。ご存じのとおり、ヤマト2199にて艦名がつきましたが、いわゆる三段空母です。私はヤマトについては世代ではないのですが、子供のころにメカコレ等で遊んだ記憶はありますし、松本零士の漫画版は愛読してましたが、アニメ本作を見たのは大学入学後です。ようするに三段空母自体にはあまり思い入れがないのです。漫画版は冥王星での負け戦は名シーンですが、七色星団省略されてますしねw

 

 ところが、昨年子供と一緒に2199を見ていて、新しい七色星団決戦のビジュアル、ガミラス側の描写もあり、これは作らねばなるまいと決心。1/1000で戦闘空母を製作、続いてバルグレイとランベアを購入。これが去年の年末ごろだったかと思います。少なくとも空母三隻はそろえようと考えていました。数か月遅れてシュデルグ発売、さらにドメラーズ3が発売決定ということもあり勢いがありました。シュデルグは現時点でも予算が通らず、ドメラーズはさすがに躊躇するところではありますが、まだ諦めてはいません。・・・少しそれました。

 加賀の製作が一段落した4月頃からまずはバルグレイを製作開始しました。この前後、普段購入している模型誌モデルグラフィックスにおいていくつかの作例が続きました。「ギャラクティカ」関連の作例です。この雑誌にはよくあるんですが、ちょっと他の雑誌ではあまり推さないようなものを推す傾向があり、その記事と作例に引かれ2か月限定でHULUに加入し「ギャラクティカ」(昔の宇宙空母ギャラクティカのリメイク版です)を全74話マラソン。これはこれで面白く、老朽艦ギャラクティカが敵襲を受けながら航海を続ける姿を見るうちに作るしかないとキットを購入。これを作るなら、モデグラ誌上のように電飾をするしかなかろう、とのことで、電飾関連を調べ始めました。
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 電飾といえばLEDを使うわけですが、電圧とか抵抗とかあまり縁のなかったものを取り扱うイメージがあり、手を出せずにいたのですが、いざ調べ始めてみると、すくなくともシンプルに模型を光らせるだけなら(点滅とか回転の表現とかをしなければ)、意外と簡単にできそうな感じでした。最悪、100均のLEDライトを買ってきて分解すれば、必要なパーツはほぼそろってしまうのです。LED数個とボタン電池、電池ケース、スイッチ、全部ついて108円ですからね。まぁ、さすがに宇宙船を光らせるにはそれだけでは難しいですが、たとえばザクの目を光らせるだけなら、100均もので十分行けると思います。必要なのははんだごてくらいです。LED自体も単価は安いし。複数光らせるのであれば絶対に必要なのはCRDというパーツで、これがあれば抵抗の計算は不要。詳しくはモデルグラフィックス2015年1月号もしくは「どろぼうひげ」さんのサイトを参照ください。特に後者のサイトには非常にお世話になりました。今回のモデグラ電飾特集もほとんどこのサイトに書いてあることと重複します。
 そして5月の連休前に秋月電子通商にて必要な電子パーツを購入。いきなりギャラクティカを作るのはアレなので、どうせ複数作るわけだし、大きさも十分なバルグレイに電飾を仕込むことにしました。
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 この際にまず考慮したのは、どこを光らせるか、ということ。まず模型誌の作例は参考にするわけですが、エンジン、艦橋、舷灯、甲板の誘導灯を光らせるものが多い。作例となるとエンジンの光を揺らめかせたりと複雑なことをするものもありますが、初の電飾作品として、まずは何ができるのかを確認したかったこともあり、まずエンジンは光らせることに決定。続いて艦橋も光らせたい。この二つがまずは第一目標。次いで舷灯と誘導灯がありますが、これについては、光ファイバーによって光源から光を回す必要があり、折り曲げができない光ファイバーを薄い多段空母の甲板内に仕込めそうもなかったため、この点については見送り。代わりに、空母内部の天井を光らせることで、格納庫内の電気がついているような雰囲気を出すこととしました。

 

 まずメインエンジン2個。これはもともとキットでもクリアースモークでパーツができていることもあり、おそらく電飾を意識したパーツ構成となっており、苦も無く電飾化に成功。CRD+LED2個で構成しました。やや紫がかった色を再現するため、白色LEDを塗装。さらにサブエンジンは中が3個に小が2個あるのですが、ここで少し考える必要がでました。CRDは1個で3個のLEDを光らせることができるのですが、3個つないだ時と2個で明るさがやや違うのです。中3個のサブエンジンを一つなぎにしてしまうとやや暗くなってしまうため、すこし悩みましたが、光源をややおくまったところに配置し、内部をシルバー塗装して光を反射させ、小のほうはクリアーパーツから光が漏れる、という程度に抑えました。ここまでで10日ほどかかりましたが、なかなか楽しんで作業をしたのを覚えています。なお、後ほどサブエンジン小については後述のクリアプラ棒による光導入に変更しています。 
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 そして天井です。この空母の飛行甲板は厚さが5mm位で3mmのLEDを仕込むとプラの厚みで組み立てができません。ここで出てくるのがチップLEDです。これはいろいろ大きさはありますが、厚さは約1mmくらいしかなく、縦横も2mmくらいしかありません。要するに極小のLEDなのですが、小さすぎて半田付けで熱破壊する可能性もあり取り扱いが難しいとされています。しかし、200円で10個くらい入っているものなので、一個一個の単価は安く、失敗しても痛くないので、ダメもとで導入。噂通り取り扱いは大変で、はんだ付けすることがまず難しい。何度か練習してまず光るようにはできたのですが、パーツに組み込もうとコードを取り回していると、コードを曲げた時の反動で本体が割れてしまう。はんだ付け後にエポキシ系の接着剤で固めてしまうことで、やや破損率を減らすことができました。10個中6個くらいは破損しましたかね。天井部分に穴をあけてこれをセット、したはいいんですが、あたりまえですが、強い光がピンポイントに照らすだけで、スポットライトみたいになってしまいました。これではちょっとなぁ、ということで新素材の導入。タミヤの2mmクリアープラ棒です。普通のクリアープラ棒ではなく、柔軟性のあるタイプというのが存在し、大きい光ファイバーのように光を通すので、これの内部に光を通し、ブラ棒を天井に横に貼ることで、光が拡散しそれっぽい感じになりました。最下段と二段目でCRDを使用し、三段目の天井と艦橋でCRDを組みました。チップLEDとクリアープラ棒の組み合わせは行ける!これが自在につかえればかなりの戦力になりそうだったのですが・・・。

 

 さて、艦橋です。さすがに艦橋についてはクリアーパーツ化されていないため、どうやって光らせるか悩みました。複雑な艦橋窓の構造のため、くりぬくのも大変だし・・・。といろいろ調べてみると裏側を薄薄攻撃して光を透過させるというテクを発見。これならいけるかも、とリューターで裏側を削りこみ、艦橋内部にチップLEDを仕込みました。艦橋に限りませんが、組み込む際には必ず点灯試験をしてから組み込むのですが、艦橋については接着部分になるため、特に入念にテスト。通常のリード線は入らないサイズなのでエナメル線でセッティングしました。近隣の天井灯と組みあわせてCRDを使用。点灯テストに成功しました。

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 これを組み立てるわけですが、実はこれが一番難しかった。各部分で作っていたものをリード線の通り道を考慮しつつ、プラスマイナス間違えないように、模型の隙間の目立たない部分や内部に穴をあけながら通していくわけです。電源に対してすべて並列につながなくてはいけないため、各部署からリード線の束が集まってきます。この段階ではまず、メインエンジン系統、サブエンジン系統、最下段天井とその上段の天井系統、艦橋とその下の天井系統このすべてが艦底部の台座の接合部分に集まってくるのです、各系統プラスマイナスがあり、逆だと光りませんし最悪壊れますので緊張します。またコードの長さを集めることまで考慮せずに切っていたため、長すぎたり足りなかったり・・・。多段空母は板の積層みたいなもので、箱ものではないので意外と内部容積がなく、そういう意味では初電飾にはむかないキットだったかもしれませんね。
 なお、電源は12vのアダプターでコンセントから取ります。無理すれば電池の内臓も可能だったかもしれませんが、ちょっと厳しかったです。そのため台座に固定した状態となります。

 さて、ここまでが5月の下旬までの作業となります。当時4泊5日の研修を控えていたため、中途半端なところで作業が終わらぬよう、仮組立と点灯テストまでは終了し、外装の塗装と飛行甲板の塗装まで終わらせた状態で研修に向かいました。

 

 ・・・その後、もともと違和感のあった左目の視野が明らかに欠けてきたため、研修終了後直行で眼科に行ったところ、網膜剥離の診断。数日後に手術し眼内レンズが入り1か月ほどは視力が不安定な状況に。さらに単焦点の眼内レンズは近くが見えないため、作業用に眼鏡を作成、等々。
 結局再度バルグレイに触ったのは9月になってから。実のところ、G1に間に合うように作業をしていたのですが、上記の事情により間に合いませんでした。

 数か月ぶりに仮組状態で甲板のデカール貼りと全体の汚し塗装、艦載機の塗装など細部の詰めを進めたんですが、どうも全体がのっぺりしていて気になる。プロップ風とは言わないまでも、なんだかよくわからないディティールがほしいと思い、プラバンやブラ棒を切り出し、適当に貼り付けてそれらしくディティールアップ。その上から再度塗装と、凝っているといえば凝っているし、無駄といえば無駄な塗装工程を経て外面的にはそれなりのところまで持ち込みました。そこで9Vの角型電池でメインエンジン系統、サブエンジン系統、下段天井系統と艦橋系統を点灯チェックしてみたのですが・・・。自分なりにプラスマイナスを決めてリード線を使用していたはずで、わかりやすいように印をつけていたのですが、複数の系統が集まってくるところになると、果たしてどれがどの系統かわからなくなりました。しかも印をつけたほうがプラスなのかマイナスなのか、それすら覚えていない。こりゃまずい。適当に流すと壊れるかもしれないし、各系統LEDが複数ついてるので、ボタン電池じゃ点かないし。という訳で、比較的配線が見やすいメインエンジン系統を分解し、CRDの接続方向からプラスマイナスを割り出し、角型電池で点灯テスト。メインエンジンOK、サブエンジンOK、甲板OK、艦橋・・・つかない?あれ、どうやってもつかないぞ。艦橋系統はCRD1個に対してチップLEDを2個使用している部分でどちらかのLEDが壊れているか途中の経路で断線しているか・・・。面倒ですが、それぞれに配線を一旦切って1つづつチェックしましたが、結果的に接着して閉じこんである艦橋内部のLEDと甲板内に仕込んであるチップLEDともに光らず。甲板内は再度別なLEDを接着することもできましたが、艦橋内部はもはや再設置不能。せっかく薄々攻撃したのに・・・。という訳で、「遺憾ながら艦橋発光を放棄する」ことにしました。対になってる甲板の部分については、エンジン上部にやや大きめの空洞があったため、天井ではなく格納庫の奥が光ってるという風に変更、ここだけ単独の系統としました。
 やっぱり、チップLEDは難しいですね。組み込む際に加わった力で破損したか断線したか、エナメル被服のはがしが不十分だったか、はんだが酸化したのか原因はよくわかりませんが、ほかの部分では成功したチップLEDもあるので、何とも言えません。ただし、5月のテストで点灯していたのは事実です。悔しいですが、次回作への課題ということにいたしましょう。

 

 電源は台座にDCコネクタとスイッチを取り付け。あまり見栄えが良くないですが、本体からのコードが丸見えなのが減点部分ですかね。もう少し目立たなくなる予定だったのですが、なかなかうまくいきませんでした。各部署を光らせること自体はさほど難しくないのですが、船体内部での配線の取り回し、模型外部への出し方、電源や台座との接続などこの部分まで考慮して製作する必要がありそうです。抵抗などの計算は確かに不要ですが、仕上がりをイメージしながらの工作が必要とされ、電飾は頭を使う模型だと言えそうです。

 

 さて、数々の妥協点を見出しながらの製作でしたが、いよいよ撮影です。せっかく発光するように作ったので、暗闇の中、発光しているところを選びたいのですが、模型写真として考えるとディティールはつぶれてしまうし、あまりいいことがない。かといって明るい写真を撮ると光っていることがほとんどわからないか目立たない。ということで、エンジンが見えることに重点を置けば、艦の右舷後方からの撮影か、格納庫内が発光していることを強調するなら、左舷正面からの撮影か、このどちらかに絞られます。画像の合成は発光状態との一致が難しそうなので、今回は見送り。また、暗い中での撮影はブレが起こりやすくISOも800以上となり、どうしても荒くなりがち。当然三脚は使用していますが、シャッターが25秒とか20秒とか空いてます。さらに被写界深度を出すために望遠よりで撮影すると暗くなるため、設定を変えていくつか撮影。どちらも相当の枚数をとりましたが、まったく使いものにならないものも多数。そのなかから2枚に絞り込みました。

 

 こちらが「自分史上最高の電飾写真」です。どうぞご覧ください。普段見えない格納庫内の艦載機が雰囲気を盛り上げます。また最上甲板の航空機もエンジンの光に照らされてシルエットが浮き上がりますね。背景に映り込むエンジン光の反射でエンジンが発光していることも匂わせつつ、甲板の発光も強調できた1枚となりました。格納庫内の奥まった部分にもう少し艦載機を並べておけばよかったのでしょうが、すでに届きません。夜間の発艦訓練の風景とでも言いましょうか。まぁ宇宙なので夜間も何もないですけど。

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 という訳で、暗いので、細部がわかりませんが、電飾写真としては、自分史上最高となったかと思います。まぁ、電飾模型を作ったのはこれで2つ目、もう一つは元々付属の発光ユニットを組み込んだゼーガペインだけなので、事実上今回のバルグレイしかないというだけの話なのですが・・・。これで艦橋が光っていればずいぶん違ったんですが、残念です。
 なかなか面白いです、電飾。ちょっと大変ではあるけれども、本当に目に見える結果がでるので。多少時間はかかりますけどね。今の新メカコレシリーズとかにちょこっとLED組み込むくらいならそんなに大変じゃないかもしれません。内部容積さえあれば。ガンプラの目も行けそうな気がします。

 来年のテーマ、電飾なんていかがですか?

 

 さて、コンペ提出写真は以上ですが、いくらなんでもせっかく作ったのに、暗い写真だけではアレなので、いくつか通常の写真を。

 ・以下の一枚は最終選考まで残りました。ある程度模型のディティールは読み取れるし、発光もよくわかる。しかし、艦載機が光で浮き彫りになる、というアングルでないため、次点ということにしておきます。艦橋が光らないのが気にならないアングルなので、撮影枚数はこちらの方が多いです。
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 ・以下の写真2点は一番目で見た感覚に近いです。1位と2位の写真は露出時間を長めにとっているため、光っている部分が事実以上に誇張されていますが、実際に目で見た感じはこのくらいの光です。
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