最後の完成品

King of MIZONOKUCHI

 

Step.1 「煽りパワーポイントの説明」

 今年のコンペである「模型写真物語」のテーマである「自分史上最高の一枚」、何をもって、何を作れば、自分史上最高になるのか?

 かつて試合に負けた後に「練習して、明日の俺は、今日よりかも強くなっている!」と田中将斗がコメントしていましたが、その論法でいけば最新の完成品が最高の完成品と言えなくもないですが…。まぁ、そうなれば良いなとは思いますが、なかなか上手く行かないのも、また現実だったりします。

 さて、アイテム選択の方に戻りますが、自分史上つまり自分の歴史を振り返ってみると、多分、初めは官舎の前に在ったスーパーの玩具コーナーで買ってもらったアオシマの合体プラモデルだったと思う、これが幼稚園の頃。小1の頃、ちょうどスーパーカー・ブームだったので、その時に車を作っていたのは覚えています。
 その後は艦船(ウォーターライン・シリーズ)やロボダッチを経て、ガンプラ・ブームの時はガンプラを作り、小6の頃の城と中1の時に鉄道模型に手を出した以外は、やはりキャラ物が多かったと思います。
 高校の頃になって、飛行機やAFVといったスケール物に戻ってきたけど、こうして振り返ってみると、物の見事に雑食と言うか、幼稚園の時から模型は作り続けているが、どれが自分にとって代表する模型かと言う点では、まったくをもって定まらないですね…。

 ただ、期間という時間軸で見たならば、もっとも長くメインでやっていたのは、フィギュアだと思います。最近はあまり作らなくなりましたが、少なくても十数年に渡って製作時間のを最も多く割いたジャンルなのは、間近いないでしょう。 

 それではフィギュアの中で、何を作れば自分史上最高なのか? イベントの販売実績で言えばアレなのだが、何と言いますか、諸般の事情で出せませんし…。個人的な満足度で言えば「ナノカ・フランカ」になりますが、既に完成させている物で済ますのも、変な話しですから。

 つまり完成していない物から選ぶ事になる訳ですが、そこで候補として挙がったのが「1/8 瑞原葉月」。今から18年前にワンフェスに参加するにあたり、販売用の原型として製作した物ですが、結局は間に合わず未完成のまま保存。
 その後、キャストコピーを前提とした原型としてではなく、ワンオフ用として製作したものの、イベント用の原型を優先していたので、少し手を着けただけで放置され、そのまま今日に至った訳なんですが…。 

 原型を作っていた当時ならともかく、今となっては同アイテムで出来の良い市販品も出ている。単に瑞原葉月の立体物が欲しいだけなら、時間や労力を考えたら、まったくをもって無駄としか言い様がないのですが…。

 別にこれにケリを着けないと先に進めない、と言う訳でもないけど、葛西純の言葉を借りるなら「今が、その時なんだよ」、って事でしょうか。

 

 

 

 Step.2 「製作する上での課題の抽出」

 さて、前述の通り一度はワンオフ化する為、一部のパーツは接着して一体化してありますが、もともとは40を超えるパーツ数でした。約20年を経て、とりあえず紛失したパーツはないと思われます。と言いつつも、無くなったのか、単に未製作だったのか、記憶が怪しいですが…。

 残った日数を考えると、単に完成させるだけでも、かなり困難ではありますが…。「バカヤロー! 作る前に、完成しない事を考えているヤツが、いるかよー」、と有名なセリフに似た言葉が頭を過りましたが、如何せん約20年前に作った物だけに、流石に今見ると見劣りする所は多々あります、と言うよりかも、そう言った箇所ばかりです。
 正直、これを完成させるよりかも、やり慣れた1/14(115mm)で新規に作った方が早いとは思いますが、やはり過去に決着をつける為にも、これを完成させないと意味がないんです。

 しかも最大の目的は完成した写真を撮る事、つまり完成させる事が最優先かつ大前提。

 そこで体積的に大きく複雑な後ろ髪は簡略化する、複製の必要が無いので一体化してパーツ数を減らす、複製ではなく製作のし易さや塗装を考慮した分割への変更、商品ではないのでスカートの内側などの見えない箇所の表面処理等は省略する、マントは先送りしつつも後日着けられるようにしておく、など工程簡略化と工期の短縮を計ります。

 そして製作する上で大きな障害となるのが、硬さ。模型用のポリパテではなく、コスト面で当時使用していたのは、普通のポリパテ。以前、ワンオフ化に着手した時点ですから、石のように硬く、文字通り刃が立たず、めっちゃ苦労しました。
 しかし、今は新兵器たる超音波カッターがある! 

 と思っていたのですが…。確かに切れ味と言う点では申し分ありませんが、そもそも超音波カッターは刃を振動させて切るので、巻き上がる粉塵たるや凄まじく、ものすごく身体に悪そう…。

 また、最後に使ったのが12年の秋に「1/14 マイティ祐希子」を作った時で、久々に缶を開けてみたら、ポリパテが完全に死んでいました…。代替用のポリパテ(自動車修理用)も、これはこれで何故か硬化不良の連続で、製作の足を大きく引っ張りました。

  

 

   Step.3 「実践を通じての課題の解決」

 今年の前半は、首や肩の痛みで思うように製作する事が出来ませんでしたが、後半は後半で、まぁ、完全に家庭の事情ですが、落ち着いて製作する時間、環境が得られませんでした。

 言い訳をしようと思ったら、鈴木みのる風に言うなら「朝飲んだ缶コーヒーの銘柄が何時もと違った」「出掛ける時に何時もとは逆の足から靴を履いた」、何だって理由にする事が出来ます。
 だから、それを理由にはしたくありませんが、現実問題として作業環境も制約され、時間的にも押し迫ってきたのも、否定し難い事実として存在しています。

 とにかく宿題を忘れた夏休み明けの子供みたく「提出する物がありません」というのは避けたかったので、この時点で完成しておらず、尚且つ完成が見込める唯一の選択肢としてあったのは「一式中戦車」のみでした。

 ジャンル的にAFVだし、皇軍のアイテムなだけに、まぁ、自分史上という点では、納得できなくもないかな?、と。

 流石に、ただ「完成させました」だけでは詰らないので、と思ったのですが、ベースを製作するマテリアル類は、使わないだろうと思い一足先に実家の方に運んでしまいました。

 ならば、せめてフィギュアだけでも、と思ったのですが、これまた昨年八九式中戦車を作った時、九七式中戦車に付属していたフィギュアを改造してしまい、一式中戦車に乗せるにはもう一度元の仕様に戻す必要があります。
 しかも、それに必要な資料も、これまた実家。

 仕様を変える予定でしたが、デカールを製作する事も出来ず。結局は、ただキットを普通に完成させました、という最低に近い内容。

 

 

 

 

Step.4 「結論」

 改めて今年を振り返ってみると、15年以上続けてきた二桁完成品も、今年でついに途絶えました。これに満足している筈もありませんが、長い人生の中ではこう言う年もあるかな?と納得するしかない、…ですね。

 やれるのにやらなかった、と言うのなら悔いは残りますが、やれる範囲でやれる事はやったのだから、それはそれで一つの結果と思っています。

 今回完成した一式中戦車が、現時点では人生で最も長く住んだ川崎での、最後の完成品になりました。

 使い慣れた塗装ブースも、一式中戦車が完成したので、これをもって解体です。あと、一か月くらいは川崎に居るので、簡単な作業くらいは出来るし、やる予定ではいますが、完成品は流石に無理ですね。

 

 模型写真物語の本来の主旨とは少しずれてしまいましたが、自分の中での模型と言う点では一つの時代が終わったので、物語にはなったと思っています。

 

 

 

 

 

Return to TopPage